以前、「お習字」を習っていました。
僕が30代の頃かな、2番目の娘が通っていた「お習字」の先生のところへ習いに行きました。
週に1回、大人の方のみの「コース」です。
最初に書かされた「文字」は「一」という字。
これは「お習字」の基本です。
筆の真ん中あたりを持ち、肩の力を抜きます。
筆を垂直に立てて、腕全体で「書く」イメージです。
「朱」で書かれた先生の「お手本」を横に置いて、さっそく練習です。
45度の角度で筆を入れ、そのまま、やや右上がりに線を引きます。
「止め」は筆を少し上げて、三角に押さえます。
この「一」という文字を1ヶ月続けました。
2ヶ月目は「二」の文字。
「ニ」の上の方は、やや下のほうに反る感じです。
下の方は、「一」の書き方で、上の方に反ります。
大事なのは、「長さ」のバランスです。
「お手本」を見ながら、次の1ヶ月間、練習しました。
実を言えば内心、少し「飽きて」きていました。
結局、「一」ばかり書いているようなものですよね。
次は絶対、「三」に違いない。
また、「一」の続きだろうな。
という感じです。
それが顔に出ていたのでしょうか、先生が「次は縦の線も入れてみましょう。」と言って渡された「手本」が、
「仁」という文字でした。その時、先生がおっしゃった言葉が今でも心に残っています。
「仁」という文字は「人偏(にんべん)」に「二」と書きます。
「人」が「二人」集まると、そこには必ずお互いに守らねばならぬ「約束事」が生じます。
それが「仁」というものです。
「仁」というのは「相手の身になって考える」ということであり、「思いやり」のことです。
一人しかいなければ、「仁」は必要ありませんが、二人になれば、「人」としての「道」が必要になります。
よく覚えてはいませんが、確か、こういう内容だったと思います。
私が、「仁」という字を好きになったのは、このことが頭に残っているからです。
「孔子」の言葉ですよね。
マザー・テレサの「愛を広めなさい、まずあなたの身近にいる人から」、
私はこの言葉も好きなのですが、これもまた「仁」だと思います。
「仁」というのは「遠い理想」ではなく、人それぞれの「すぐ傍」にあるものです。