50代のとき、「弓道」を習っていました。
初心者は「体操服」でやってもかまわないということでしたが、「身なり」は大切だと思い、「弓道衣」「袴」「帯」を揃えました。
「弓道」は、「弓」と「矢」だけでなく、「白足袋」、「草履」、弓に張る「弦」、右手にはめる手袋のような「弽(しょう)」も必要です。
その他にも、道具の手入れをするものが「セット」になっているものを購入しました。
どうも私は、何でも「カッコつける」ことから始めるタイプの人間のようです。
最初は「礼儀作法」から入ります。
一通り、「弓」が引けるようになるまでに、私の場合、3ヶ月くらいかかりました。
中でも、苦労したのは「跪座」という「座り方」です。
座っていながらすぐに行動ができるように正座の状態で、足のつま先を立てます。
「跪座」にもいくつか「作法」があり、細かいことを1つ1つ覚えなくてはなりません。
その「跪座」が辛いのです。2~3分のことが、1時間のように感じます。
このような「作法」に慣れるまでに、私の場合、3ヶ月くらいかかったということです。
「弓」は簡単には引けません。
結構、重くて、引くのに「力」が要ります。
「弓」を引いている時に、あまりの重さに顔が引きつり、手が「ぶるぶる」と震えます。
その時に、「師範」から教えてもらいました。
「重いものは、軽く扱え、軽いものは、重く扱え」ということです。
「弓道」における所作は「弓」や「矢」は比較的「軽い」もので、「弓」を引く動作はとても「重い」ものです。
「弓」や「矢」は「軽い」からといって、「乱雑」に扱うことがあります。
いわゆる「軽々しく扱う」ということです。
同じように、「弓」を引くときは「顔をしかめて」、いかにも辛そうな表情をします。
「重いものは軽く、軽いものは重く」というのは、それを「戒めた」教えです。
「茶道」において、「茶杓(ちゃしゃく)」「茶筅(ちゃせん)」「柄杓(ひしゃく)」を扱う時の「ゆっくり」した動きは、まさに「軽いもの」を「重々しく見せる「所作」です。
1つ1つの動作に、その道具の「重さ」を感じます。
「弓道」も同じで、「弓」「矢」を持てば、その「重さ」を伝えるような「ゆっくり」とした「動き」が必要であるし、
「弓」を引けば、何事もないように、「涼しい」顔でいることが大切です。
私は、「弓道」を通じて、人生における「大切なこと」を学んだような気がします。