

武道の聖地である「日本武道館」で初めて「ロック・コンサート」をしたのはビートルズでしたが、初めて「日本武道館」で演奏したのはビートルズではありません。
初めて「日本武道館」で演奏したのは、ビートルズのコンサートの前座を務めたグループや歌手です。
「ジャッキー吉川とブルーコメッツ」や「桜井五郎とブルージーンズ」、あと尾藤イサオ、内田裕也の合同演奏で「ウェルカム・ビートルズ」という曲を演奏したのが一番最初でした。
それに、「ザ・ドリフターズ」と「望月浩」が続いて、やたらと長い前座だったのを覚えています。
当時は、西洋のロカビリーやロックがブームだったので、尾藤イサオや内田裕也が出演するのは何となくわかりますが、望月浩みたいな「メローッ」としたのが「メローッ」とした歌を歌うのには大いに違和感を覚えました。
ましてや、「ザ・ドリフターズ」のコミック芸まで見せられると、「この人たちがホントにビートルズの前座?、早く終わらないかなあ。」とビートルズを心待ちしていました。
でも改めて当時の映像を「YouTube」で見てみると、「とても良くできた前座」だったなあと思います。
ビートルズと言えば、
自分たちで曲を書いて、自分たちで演奏する、ロック・グループ
ロング・ヘアーを振り乱して、激しくシャウト
ジョンのかすれた声とポールの甘い声で奏でるハーモニー
こんなイメージです。
ビートルズがあれほど成功したのは、「彼ら一人ひとりのチャーミングな個性」と、とても四人で演奏しているとは思えない「優れた演奏能力」、四人の、特に「ジョンとポールの歌唱力」、演奏しているとき以外で見せる「お笑い芸人のような親しみ」などを備えていたからでしょう。
当時のコンサート関係者も同じように感じていたのかもしれません。
ビートルズにふさわしかった前座
「自分で曲を書く」ということと、ビートルズを歓迎するという意味で、「ウェルカム・ビートルズ」という曲を最初に演奏したのですが、この曲は「ブルーコメッツ」の井上大輔が書きました。
「ブルーコメッツ」や「ブルージーンズ」は、比較的、演奏がしっかりしていました。
ビートルズの激しいロックのイメージで、尾藤イサオや内田裕也が歌手として登場。
「メローッ」とした望月浩は、きっとポールの甘い声をイメージしていたのかも(?)。
そう考えると、当時「場違い」だと思われていた「ザ・ドリフターズ」の出演も、ビートルズのコミック面を意識してのことでしょう。
「日本武道館」でのビートルズのコンサートで行われた「前座」は、ビートルズのイメージをよく表したものといえます。
でも、「ドリフターズ」も、元はと言えば、「ハナ肇とクレージーキャッツ」を真似たものだと思っています。
だから、ビートルズに近い、日本のグループは「クレージー・キャッツ」なのかな?
「クレージーキャッツ」は、ハナ肇、植木等、谷敬、犬塚弘、安田伸、石橋エータロー、桜井センリ、一人ひとりの個性が光っていたでしょう?
一人ひとりが「ジャズ」のプロで、楽器の演奏能力も相当な腕前です。
優れた演奏能力を持ちながら、意図的にコミック・バンドを演じていたのです。
そういう意味で、私の頭の中ではビートルズと、クレージーキャッツやドリフターズ、のイメージが重なるのです。
私がビートルズに夢中になったのは、彼らの曲が斬新だったことと、何よりも彼らに「ユーモア」があったから。あなたもそうではありませんか?