若いころに書いた「童話」が見つかりました。
映子と付き合い始めて結婚するまでつけた「交換日記」の中に残っていました。
映子は幼稚園の先生だったので、こんな童話を書いてみたくなったのでしょう。

子供の庭

作者:ボク、時々 映子(未定)
挿絵:映子(予定)、時々 ボク
登場人物:さくら組 ゆかちゃん、あこちゃん、デブくん、チビくん、ノッポくん、園長先生、ヒロヤン(さくら組の先生)

冬のあたたかい日のこと、
  そうそう、この前の水曜日
 ゆかちゃんは、庭のすみっこにある大きな木のまわりを春の歌を歌いながら、ピョンコピン、ピョンコピンと
      とびはねていました。

  とびながら、ゆかちゃんは
       こんなことをかんがえました。

”もしも (ピョンコピン)
   このまま (ピョンコピン)
     とまらなかったら (ピョンコピン)
        どうしよう (ピョンコピン)

そしたら (ピョンコピン)
   おうちを(ピョンコピン)
          ここに持ってきて...(ポカリ!!)

あれっ?! ????!!?!?!!??”

       ゆかちゃんは、
  きゅうにとぶのをやめて
          上をみあげて言いました。

”なんだろう??  なにかがあたまの上におちてきたみたい。”

へんだなあーと思っていると、また一つ。
   こんどは鼻の上になにかがおちてきました。

          それから、ポカンとあいていた口の中にはいりました。

ポリっ!”   ”ポリっ!”     ”ポリっ!”    ”ポリっ!

”なあんだ、ビスケットか... でも、どうしてビスケットが木の上からおちてくるの?”

ゆかちゃんは、しばらくかんがえていると、
   きのう、ヒロヤン先生から「赤ずきんちゃん」の話しをきいたことをおもいだしました。

”オオカミだゎ、オオカミがきっと私をビスケットでだまそうとしてるのね。
   わるいオオカミだから、こらしめてやろう... でも....
あこちゃんをよんでこよう!

そういうわけで、ゆかちゃんとあこちゃんはすっかり木の上のはっぱのかげに、オオカミがいると信じてしまいました。

ふたりが木のふもとでようすをうかがっていると、
   木の上からこえがしました。

モソモソ”  ”ヒソヒソ”   ”モソモソ

”あっ、オオカミがなにかはなしてる。” ゆかちゃんがいいました。

”でも、なんだかデブくんのこえみたい。” あこちゃんがいいました。

ヒソヒソ”   ”モソモソ”    ”ヒソヒソ”   ”・・・・

”ほら! やっぱりオオカミよ。” - ゆかちゃん。
”でも、チビくんのこえににてるね。” - あこちゃん。

・・・・”    ”・・・・”    ”・・・・”    ”・・・・

”ノッポくんのこえみたい。” こんどは、あこちゃん。

”わかった! きっとあの3人組はもうたべられたのよ。はやく先生にしらせないと、たいへんよ!” - と、ゆかちゃん。

”わたし、先生 よんでくる。” ゆかちゃんは おおいそぎではしっていきました。

ひとりのこったあこちゃんは、オオカミにたべられている3人組をはげますように、大きなこえで、さけびました。

チビくん、ノッポくん、デブくん、いま先生がくるからネーッ!!

そのとき、ゆかちゃんがおおいそぎで、もどってきました。

”先生はこないの?”

”うん、先生にはなしたら、ちっともビックリしないの、そしてネ、園長先生がくるゾーッ、っていったら3人組はオオカミのおなかからでてくるんだって。”

”?????”

ゆかちゃんとあこちゃんは、大きなこえで、

園長先生がくるゾーッ!” と、さけびました。

すると、すぐに 3人組は、木をおりてきました。

ゆかちゃんとあこちゃんは、目を丸くして、

”だいじょうぶ? オオカミはしんじゃったの?” と、口をそろえていいました。

3人組はモジモジしながら、
    ”う、うん。”    ”それが・・・”    ”あの・・・”
と、わけのわからないことをいっています。

そのとき、きょうしつの前で、ヒロヤン先生が、

”みんなー、お話のじかんだよー!!” と、みんなをよんでいます。

ゆかちゃん、あこちゃん、チビくん、デブくん、ノッポくんは、元気よく、先生のところへはしっていきました。

はしりながら、

デブくんは、チビくん、ノッポくんに、ちいさなこえでいいました。

”もう木の上でビスケットはたべれん!”

— お ・ し ・ ま ・ い ー

 

 

子供の庭(2)

『子供の庭』には続きがあります。
映子と交換した日記に映子が続きを書いてくれました。
映子は幼稚園の先生で、ボクはまだ職に就いていませんでした。

作者:ボク、今回は映子
挿絵:映子、時々 ボク
登場人物:さくら組 ゆかちゃん、あこちゃん、デブくん、チビくん、ノッポくん、園長先生、エーコ(みどり組の先生)、ヒロヤン(さくら組の先生)、こづかいさん

水曜日の帰り道、
   ゆかちゃんとあこちゃんは、オオカミさんのことがとても気になりました。

「ねえー、あこちゃん、オオカミさんはあの木の上にすんでるの?」

「ビスケットの大好きなオオカミさん?」

「そうよ。ビスケットの大好きなオオカミさん、あの木の上でまいばんゆめをみるの?」

ゆかちゃんは、あの木の上でオオカミさんが、ビスケットをたべているとおもっているのです。

「ねえー、ゆかちゃん、あしたのあさはやく、ようちえんに行って、おおかみさんをおこしてみよう。」

あこちゃんはそういいました。そして、-
       ふたりはそれぞれのおうちへかえりました。

ふたりとも、オオカミさんのことが気になって、ひとばんじゅうねむれません。

「オオカミさん、ビスケットばかりたべてるのかな?」

お水はいつのむのかな?」

「オオカミさん・・・・?」

「・・・・・・・???」

ゆかちゃんは、いろんなことをかんがえました。

 

あくる朝、ふたりはそ~っと、ようちえんに行きました。 そして -

木の上をおそるおそる見上げました。

「ねえー、オオカミさんいる?」

すると、とつぜん!!

キャッ!!

ふたりは大声をたてました。

「オハヨ~ウ!」というこえがしました。

ふたりはビックリしました。

キャッ!オオカミだ!」 また、おおごえをだしました。

  でも、ふたりがオオカミだとおもったのは、じつは、
        こづかいさんだったのです。

「あこちゃん、ゆかちゃん、ふたりともあさはやいねえー、いったい、どうしたのかい?」

「・・・・・・」

「あの~! おじちゃん、その木にオオカミさんいる?」

ビクビクしながらたづねました。

「オオカミかい?」

「うん、きのう、その木にいたの、オオカミさん。あのね、ビスケットたべてたみたいなの。」

「ビスケットをねえー?」

おじちゃんは、わらいながら、ふたりをみつめていました。

 

— お ・ し ・ ま ・ い ー

 

 

子供の庭(3)

『子供の庭』にはさらに続きがありました。
映子との交換日記に書いていた「童話」の続きにボクが付け加えたものです。

作者:今回はボク、映子はおやすみ
挿絵:映子
登場人物:さくら組 ゆかちゃん、あこちゃん、デブくん、チビくん、ノッポくん、園長先生、エーコ(みどり組の先生)、ヒロヤン(さくら組の先生)、こづかいさん

「おはようございます。」

ゆかちゃんとあこちゃんは、
     エーコ先生には目もくれずに、
          おたがいむきあって、
なにやらわけのわからないことを話しています。

「なに話してるの?」と、エーコ先生はみをのりだして、言いました。

なぜなら、エーコ先生は、そういうことが好きな先生だったからです。

「先生、きのう 大きな木の上で オオカミがビスケットをたべていたのよ。

   そしてネ、ノッポくんとチビくんとデブくんがたべられたの。

それをわたしたちが・・・・」と、

あこちゃんが言いかけると、むこうのかどから、ヒロヤン先生がやってきました。

ふたりは、ヒロヤン先生のほうにとんでいきました。

『オオカミが木の上にいるわけないじゃないの。』エーコ先生はひとりごとを言って、さっていきました。

 

ヒロヤン先生とゆかちゃん、あこちゃんが、
   わらいながら、おにわにはいって、
     おへやのほうへ歩いているとき、
    ふとうしろをふりむくと、
  にわのすみっこの大きな木の下で、
      エーコ先生がくびをかしげて、
 ぼんやり木の上をみつめていました。

ゆかちゃんとあこちゃんは、くちをそろえて、さけびました。

センセー!! オオカミなんていないのヨー!!

 

— お ・ し ・ ま ・ い ー

 

 

『子供の庭』はこれでほんとうにおしまいです。
こづかいさんが、まだとうじょうしていなかったので、こづかいさんのおはなしを書きます。

こづかいさんのおはなし

作者:今回はボク、映子はおやすみ
挿絵:映子
登場人物:さくら組 ゆかちゃん、あこちゃん、デブくん、チビくん、ノッポくん、園長先生、エーコ(みどり組の先生)、ヒロヤン(さくら組の先生)、こづかいさん

その日は、つめたいかぜが ピューピューふいていました。

   でも、こどもたちは、庭にでて

          げんきにあそんでいます。

   オニゴッコやカクレンボ

じめんに絵をかいている子もいます。

    ヒロヤン先生もエーコ先生も

     いっしょになってあそんでいます。

でも、みてごらん -

   庭のすみっこの大きな木のところで -

おとこの子がおんなの子を -
チビくんがアコちゃんを -

・・・と、おもったら、じつは

あこちゃんがチビくんを -
    おんなの子がおとこの子を

いじめているのでした。

そこをとおりかかったこづかいさんが、けんかしているふたりを見つけて、

「こら、こら、なかよくしないと、先生におこられるぞ。」

      と、言って、

「おんなの子のくせにどうしておとこの子をいじめるんだ。」

      と、言って、

      さいごに

「わけをはなしてごらん。」 と、言いました。

「あこちゃんがボクをたたいたの。」 と、チビくん。

「ちがうわ、チビくんがわたしの足をふんだのよ。」

    と、あこちゃんがやりかえす。

「うん、よくわかった。でも、けんかというものはどちらもわるい。」

こづかいさんは、そう言って、ふたりにこつん!こつん!と

ゲンコをやると、ふたりは ギャーギャーなきはじめて、

   先生のところへはしっていきました。

「おじいさん! また、こどもさんをなかせたのね。

  ちかごろは、こどもさんをたたくと、

たいへんなことになるんですヨ。」と、

こづかいさんのおくさんがやってきて言いました。

「ばあさん、わかっちょるよ!しかし、わしゃ、

こどもがすきだからなぐるんじゃ。

 すきでなかったら、どうしてひとさまの子をなぐれる。わしゃ -

あの子らがじぶんのこどものようにかわいい。

ヒロヤン先生もエーコ先生もわしになぐられてそだってきた。

     ふたりとも大きくなって・・・・

わしもとしをとった・・・だがな、あのころから

わしの情熱はすこしもおとろえておらん・・・」

「わかりましたよ。おじいさんのすきなようにやりなさい。

サッ、かぜがつめたいから、かぜひきますよ。中にはいりましょ。」

おじいさんは、じっと立ったまま、

こどもたちを見ています。

「おじいさん! ・・・・ さあ ・・・・かぜひきますよ!」

「ばあさん、わしゃ もうすこしここにいるよ。

わしゃ、30年ちかくここのこづかいさんをつとめてきた・・・

『まんねんこづかい』じゃ・・・こづかい、いがいはなにもしらん、

のうなしじゃ・・・だがな・・・こうやってこどもを見ていると

  わしゃ それだけでまんぞくなんじゃ。

こどもたちがケガせんようにみまもってやらにゃあ

しんぱいでしかたがないんじゃ。」

 

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まもなく

先生が部屋に入るようにと、みんなに言いました。

こどもたちは みんな お部屋にかえっていきます。

「チビくんいたくなかった?」

「あこちゃん、ごめんね。」

あこちゃんとチビくんがなかよくならんでお部屋にかえるのを見て、

こづかいさんはおもわずニッコリわらって言いました。

「こどもはいいのう・・・そういえば、ヒロヤン先生もエーコ先生によくなかされたものだ・・・」

こづかいさんは、せなかをまるめて、かえって行きました。

 

 

— ほ ん と に お し ま い ー

 

 

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