『人生最高の贈りもの』というドラマを見た。
元大学講師の翻訳家・笹井亮介とその娘の物語である。
寺尾聰と石原さとみが主人公。
笹井亮介(寺尾聰)は、妻に先立たれ一人暮らしをしている。娘のゆり子(石原さとみ)は、長野県のとある町で、亮介の元教え子で教師をしている夫・田渕繁行(向井理)と暮らしている。
ある日突然、ゆり子が父のもとに帰ってくる。
理由はわからない。前半はそんな謎をかかえたまま時が過ぎてゆく。
心配した父が、娘婿のすむ長野に行って、初めてゆり子が帰宅した理由を知る。
娘は「がん」で残された時間はわずかだった。
娘の帰宅は、父親との楽しい思い出があまりなく、残された時間の半分を父親と過ごしたいという思いからであった。
後半は事情を知ってからの、父娘の心の葛藤。
こんなふうにストーリーが進むと、何となく「暗い」イメージが想像できるが、このドラマはそうではない。実に「淡々と」してむしろ「明るい」。
でも、娘が「明日、家に戻る。」と告げたあたりから、娘婿も思わず、涙する。時間が半分過ぎたのだ。
父娘の生活の最後の日に、娘は母譲りの「筑前煮」を、父は母譲りの「白和え」をお互いに教える。
このドラマには一切「無駄」がなかった。
・ 冒頭で父がテレビで「落語」を見ている場面
娘が長野に帰る日に父娘で「落語」も見に行く場面の布石
・ 父の何でもない仕草に笑う娘
・ 父の口ぐせ、「うるさい!」
・ 父の友人と「バー」で飲むときに、スーパーの袋を下げてくる場面
最後に娘から教わって作った「筑前煮」を持って再び友人と「バー」で飲む
父が涙をこらえて感慨深げにウィスキーを飲む場面でドラマが終わる
・ これまで、娘に対して「大丈夫だ、お前ならできる、頑張れ!」と一度も声をかけてやらなかったこと
娘が長野に帰るとき、
父は「繁行くんに白和えを作ってあげなさい」と言う。
その後に、「大丈夫、ゆり子ならできる、頑張れ!」と付け加える。
このドラマはこのセリフを最後に言いたかったのだな、と思わず泣いてしまった。
このドラマには「死」に直面する場面はでてこない。
その反対、「生」への讃歌で溢れている。
それこそ、『人生最高の贈りもの』ではないのか。